Kauzmichi Shirai

インダストリー4.0について勉強しようと、長嶋聡氏の”日本型インダストリー4.0”を読んでみた。 日本型インダストリー4.0というタイトルではあるが、インダストリー4.0そのものについて丁寧に説明してあり、事例も紹介されていて、わかりやすかった。

インダストリー1.0とかって?

そもそも、インダストリー1.0や3.0を見たことがなかったが、いきなりインダストリー4.0というのが出てきた印象を前から持っていた。本書によると、インダストリー1.0 ~ 3.0は以下のように区分されるらしい。

  • 第一次 18世紀の蒸気機関による機械化
  • 第二次 20世紀前半の電気エネルギーによる大量生産
  • 第三次 1970年代ごろ、コンピューターによる自動化

インダストリー4.0の特長

そして、インダストリー4.0とは10~20年後に実現すべき製造プロセスのスマート化製造プロセスであって、大きく分けて”つながる”,“代替えする”,“創造する”に分けれるそうだ。

  • つながる
    • リアルとバーチャルをつなげ、時間を短縮
  • 代替えする
    • 3Dプリンタ
  • 創造する
    • ビッグデータ

例えば、”つながる”の例では、キネクト技術を使って、バーチャル工場を歩き回れる事例が紹介されている。これにより、工場を新設するときの手戻りを大幅に減らせるそうだ。 また、代替えするの事例では、インテークマニフォールドの試作品製造が挙げられている。この例では、3Dプリンタで、試作期間4カ月–>4日, 試作費用50万ドル–>3000ドルに削減できたそうだ。

今までの工場での改善活動と差がなさそうに思えたが、筆者曰く以下の3点で従来とインダストリー4.0は違うそうだ

  1. 取り組むスケール、対象範囲が広い
  2. 取り組みの頻度。”これまでの週次、月次、四半期というレベルから、日次や1時間ごとへと急速に高まっている。 “
  3. ロードマップと非競争領域の存在

技術の力で、場所(1)と時間(2)のスケールが劇的に変化するということが、自分には印象的だった。

アメリカでは、データ起点のインダストリー・インターネット

また、自分が本書を読むまでにイメージしていたインダストリー4.0はIoTを使った改善であり、このイメージはインダストリー・インターネットに近かった。インダストリー・インターネットはアメリカで起きている、データ起点の製造業の進化である。 アメリカはインダストリー・インターネットの特長は以下の3つ

  • インテリジェント機器
  • 人工知能・アルゴリズム

最近話題になっている、GEがやろうとしていることがまさにインダストリー・インターネットである。 例えば、本書でも紹介されているようにGEは 「ビッグデータ解析を活用して、エアラインに対してモノ売りだけでなく、フライトプランと照合した最適な運用方法の提案まで踏み込むことを目指している。」。 この運用方法の提案まで行おうとしているとことに新しさを感じた。

“日本型”インダストリー4.0

本書で提案されている”日本型”インダストリー4.0については、イマイチわからなかった。 “欧州の「工場起点の製造業復権」、米国の「データ起点のビジネスモデル創出」に対して、日本のデジタル化、ICT活用の方向性は、「お客様起点の付加価値創出 」がふさわしいだろう。” と述べられており、日本の持ち味「慮る」気持ちを用いることが提案されている。 また、日本は現場力が高いので、インダストリー4.0に力で従来のカイゼンを高速で行うことで、さらに製造業プロセスを進化させることができるそうだ。

まとめ

インダストリー4.0について丁寧にまとめられており、わかりやすかった。また、アメリカのインダストリー・インターネットも取り上げられていて、最近の世界の製造業の流れを見ることができる。ただ、日本型インダストリー4.0についてはまだ自分の理解が及んでいないので、もう一度、その部分を読みなおそうと思う。本書の最後には、インダストリー4.0時代に必要な「マネージャーの能力」や「現場の教育」についても書かれており、これも面白いかった。インダストリー4.0について初めて知るにはいい本だと思った。